事例集

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おことわり
この事例集は、過去に携わった税務調査事案を基にまとめたものですが、詳細な事柄についてまでは記述しておりません。事例中の帳票名称等は、一般的に理解していただけるであろう名称に置き換えました。
事例によりお伝えしたいことは、税務調査では必ずしも「伝票」や「証憑」のみの確認に限らず、「その背景となっている事実を確認することである。」ことを理解していただきたいということです。

化学工業・費用化時期

工場敷地内の土壌の洗浄・交換等の工事について、本社の稟議書の上では期末までに予算執行計画書どおりに終了したとして経費計上していたが、工場調査を実施した際に、当該工事内容に係る連絡事項が社内メールで発せられていたことを確認し、なんと工事が翌期にまで続いていたことが判明した。当該メールを基に、工場内従業員数人に確認を行ったところ、「回覧板としてプリントして残してある」旨の申し述べを受けたので、早速にも当人と共に保管場所等を現物確認調査した。
調査の結果、工場での役職員が「計画どおりに工事が終了した」との報告書を作成したいがための工作を行ったものであり、当然に当期の費用にすることはできないことから多額のペナルティを納税することに至ったものである。

注意
工場は必ずと言っていいほど実地調査の対象になりますので、本社との連絡内容及び工場独自の連絡網・体制は統一しておくことが肝要です。特にメールについては、会社内のものは全て業務に直結するものとして確認の対象になりますから留意しておきましょう。

製造業・給与

家族経営の場合には、出勤簿やタイムカード、給与振込口座などの書類整備が比較的疎かになっていることが多く、勤務実態が以外と見えてこない場合が多いので、一人ひとりに仕事の手順などを聴取するが、たまたま大量の注文が続いてきた場合などには、アルバイト(特に家内工業的なものは、近所の手隙の主婦など)を臨時で雇うことがある。時給単価や労働時間数は概ね一緒だが、一人だけ長時間労働者がいた。当該者に連絡して「何の作業をしたのか」と尋ねようと、住所地・氏名を基に区役所で住民票確認したところ、隣町に住む一族の母であった。年齢は米寿近く。近所の主婦に「ここのおばあちゃんを知ってる?」との問いに、「数年前からケアハウスに入所している。」との回答。つまり、給与の実態はなかったのである。同じパターンを遡及して調査すると、入所する以前から病院に入院するなどしていて、当該名前を使った架空アルバイトを利用した所得の圧縮であったことが判明した。なお、支払調書は提出していなかった。

注意
中には、書類は完璧に揃っているが架空の場合もありますので、調査官は作業内容を丹念に聞き取り調査を実施します。過去の事例研修を基に、業種別学習には余念がありませんのでお気を付けくださいね。

IT関連業・減価償却

「物品(固定資産)購入稟議決裁綴り」によると、決算期末日までに納品したとされるワークステーションの設置について、納品書・検収状況書・請求書、その他の設置等資料につき全て問題はなかったが、保証書日付がニ度押印されていたことに不審を覚え、当該ワークステーションの基幹OSのセッティング日付を確認したところ、翌期となっていた。この事実を基に設置業者への反面調査(設置担当者の出張状況確認)を実施したところ、設置業者と共謀して納品日等を前倒しすることで、当期の減価償却費用を過大に申告し利益を圧縮していた事実を確認した。

注意
調査官も「IT研修」を受けていますので、最低限の確認調査はしていきますよ。OSのインストールは、業者やメーカーが行いますので、その日付を変更することは叶いません。小細工は大けがの元ですよ。

建設業(元請業者)・交際費

組調査案件(2人以上で調査する案件)により把握した「現金交際費元帳」を端緒に、双方の役職別出席者名、同席人数、飲食店名及び金額を丹念に確認したところ、一定期間ごとに同一内容の社内伝票が発せられていることに疑問を持ち、社内出席者を任意に抽出し、手持ち手帳の内容との確認作業を行ったところ、地方に出張していた者を確認した(つまりは、その場にいなかったことが解ってしまった。)。
社内規定による部課別交際費の額では足りなかったので、プール資金を作っていたことが見つかってしまい、多額の追徴税額を納付することとなった。

注意
実際に飲食した店舗に行って人数と金額などを確認する「反面調査」を必要と認めたら、当たり前に行われますから、悪さをしようと考えるのは諦めて、予算を獲得する努力が役職には必要なのではないでしょうか

IT関連業・交際費

中堅規模のIT関連業の準備調査段階において、過去の「調査経過・指導事項報告書」を眺めていると、その指導事項報告書の中に、「交際費(顧客ランク別)リスト」という名称の冊子があるのを見て、調査初日に提出させたところ、同名冊子ではあったが、ごく最近のプリント物である感触だったので、遡って、そのリストの補正状況が解るものを用意させた。
当社との取引金額がそんなに多くはないある会社が、なぜか、最初に提示のあった中ではBランクであった。遡ってみるとBランクになる要因が見つからず、直前(数年前のもの)ではDランクであった。
突き詰めてみれば、資金プールのために架空計上した伝票ということが実地調査直前に社内調査で判明したが、修正が間に合わないことに焦りを覚え、当該リスト上にランクアップさせていた(使用額に見合うランクにした)ことが解ったものである。

注意
その業種に応じた調査法が代々の先輩諸氏から伝わっていますので、中途半端な手直しなんかすると大きな不審に繋がり、将来も色眼鏡で見られても好い事はないので、間違いは素直に認めることが肝要です。

飲食業・売上

ちょっと古い話であるが、いわゆる「抜き打ち調査」を実施した事案である。
過去に2度映画にもなった「マルサの女」の後のことであるにもかかわらず、レジカウンターを通さない売上があるとの「タレコミ」により後輩と共に内定調査を実施し、飲食後に「釣はいらないから領収証の白紙でくれないか?」と伝えたら「ハイ」と言って、白地のコクヨ領収証(シャチハタ印はあった)を渡してくれ、案の定レジ打ちはしなかった(ビンゴ!!)。自分のサイドバックらしき中に現金をしまったのを確認して、翌朝の実地調査着手である。
あらかじめ番号を控えておいた1万円札と5千円札の2枚を、無事サイドバックの中から発見し、これ以外の売上高を記載したメモを基に、多額の修正申告書の提出に至ったものである。

注意
飲食業はとかく「(実地調査の)事前連絡をしない」ことが多い業種です。たとえ現在の国税通則法があっても例外はある(不必要なものまでを対象とはしていません)ことを前提に、特に売上は正しい記帳を求めておかなくてはなりません。

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